自治会・町内会を法人化する―認可地縁団体とは?-
- Sachiko Fukushima
- 7月5日
- 読了時間: 5分
更新日:7月7日
みなさんは、自分が住んでいる地区の「自治会」に加入していますか?
自治会とは、地域住民が主体となって、自分たちの住む地域をより良くするために活動する組織のことです。地域によって「自治会」、「町内会」、「部落」などの名前で呼ばれていますが、活動内容は基本的に同じで、住民同士の親睦を深めたり、地域の環境美化や防犯・防災活動などを行ったりします。
おりしも、当方が所属する自治会では草刈り作業の予定が入っています。夏の暑い日に、自治会員がほぼ総出で地区内の草刈りを行います。こういう行事や、地区内の人間関係が面倒…とかで自治会に加入しなかったり、やめていく人もいますが…。

地縁による団体・・・
自治会は地域社会において重要な役割を持っていますね。行政の手が追い付かない、特に軍部などにおいては、その地域に住んでいる住民自らの助け合いによって、地域内で共同活動を行ったりしています。
自治会や町内会などは、そのような地域の縁(地縁:住んでいる土地に基づく縁故関係)で成り立っていますが、自治会や町内会などには法人格はなく、いわゆる「権利な能力なき社団法人」に該当するものとされています。
法人格がないことのデメリットは
自治会名義では銀行口座の開設ができない
自治会名義では不動産などの所有ができない
ところにありました。なので、銀行口座などは会長が変われば名義変更を余儀なくされていましたから、これまた面倒な作業になりますよね。
ですが、平成3年に法律の改正があり、この地縁による団体が一定の要件を満たす場合に、市町村長の認可を受けて法人格が取得できるようになったのです。

「地縁による団体」の定義
まず「地縁による団体」は、法律ではどのように根拠づけられているのでしょうか?
地方自治法を見てみましょう。
「町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体」という風に定義されていて、
〇〇町とか□□地区とかで明確に区切られた地域に住所がある人なら、誰でも入会できること
スポーツや伝統芸能など、特定の活動に限定されているものでないこと
等の条件を満たしていて、その区域の住民相互の、連絡、環境の整備、集会所等施設の維持管理など、良好な地域社会の維持形成のための活動を行っていることが必要です。
現在、「自治会・町内会」としての組織は約29万団体ほどが存在しており(令和5年総務省調査)、令和2年において約71%の加入率となっており、加入率はだんだんと低下してきている。

認可地縁団体(地縁による団体を法人化する)
今まで説明してきた「地縁による団体」が法人化したものが「認可地縁団体」と言います。それでは認可地縁団体を設立するまでの流れを見ていきましょう。
①まず事前準備を行います
規約の内容を検討し、誰に代表者になってもらうかなど、案を作成したり構成員への根回しなどを行っておきます。構成員になる方の名簿も作成しておきましょう。
②総会の開催
事前準備を周到に行い、トラブルなく申請に向かえるように環境を整えたら総会を開催します。この総会で認可地縁団体の設立を行うことを議決を行います。ここで揉めると計画がとん挫するので、このようなトラブルがないよう、事前に構成員になる方々には十分な説明が必要になります。
③申請書類の提出
総会で無事議決がされたら、申請書類をそろえて自治体に申請します。
④審査
申請書の提出後、告示期間があります。この期間内に異議を申し立てたりする人がいると、計画がとん挫するかもしれません。そのために関係者には十分な説明が必要になります。事前準備の段階でしっかり行っておきましょう。
⑤認可→証明書の交付
告示期間も無事すぎましたら認可となります。法人になると言っても、認可地縁団体の場合は、法務局への法人登記は必要ありません。
申請書類の作成も大変ですが、この認可までの各段階で何を、どのようにしていくか…この段取りをするのも結構大変な作業です。

不動産を認可地縁団体名義にする
無事、認可地縁団体が設立になったら、次はその団体で管理していた不動産を認可地縁団体の名義に変更していきます。
地縁による団体では、集会所や山林、共同の墓地、共同で管理している農地などがあるところもあります。一定の要件を満たしていれば、認可地縁団体で不動産が所有できるようになりましたが、その要件とは
認可地縁団体がその不動産を使用している
10年以上所有の意思を持って平穏かつ公然と占有している
登記名義人の全てが構成員又はかつて構成員であった
登記名義人又は相続人の所在の分からない人がいる
の4つです。
かつて、「地域で共同でこの土地を管理していこう、この土地はこの地域のものだ」として、その地縁による団体の構成員全員の共有名義にした…月日はたち、かつての名義人は亡くなっていき、相続手続きもされないまま世代が新しくなり、気が付いてみれば相続人が数百人…、どこにいるか行方の分からない相続人がいる…、戸籍が追えないとかいうような状況になってしまい、普通に相続手続きをして名義変更ができる状況じゃない場合、上記の4つの条件を満たすことで認可地縁団体の所有にすることが可能です。
認可地縁団体を設立する際には、不動産の所有を前提とする場合、この不動産の所有をすることも総会にかけて議決をしておかねばなりません。
そして、認可地縁団体設立のための申請書類の提出後、告示期間で関係者から異議が出た場合、もしかしたら認可地縁団体でこの不動産が所有できない、という事態になるかもしれません。
不動産を認可地縁団体で所有したい理由、その時のメリット・デメリットなどの情報を地域の皆さんとしっかり共有し、十分な事前の説明をすることが大事ですね。
また単に、自治会を法人化する…という意味だけでなく、例えば地域ぐるみで高齢者等への生活支援、公共交通の維持、地域内の経済活動などを行っている地縁による団体も増えていることから、このような団体が法人化することにより、不動産等の所有も含めて、安定的に地域への役割を果たしていけるような体制づくりを進めていけることにもなるでしょう。




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