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小規模企業の多角化戦略の大事なポイントは?

更新日:2023年9月23日

今回は、小規模企業=小さな会社での多角化をどうするかのポイントについて解説していきます。


「小さな会社」まで絞り込む前に、まずは「中小企業」と呼ばれる定義があります。


中小企業基本法という法律で定義されていますが、この法律は中小企業を発展させて、国民の生活の向上を目指そうという趣旨の法律です。


中小企業基本法では、下記のように中小企業について定義されています。

​業種分類

定 義

製造業その他

資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業

資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業

​資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

中小企業の中には「小企業」が含まれています。この「小企業」の定義は下記のように定義されています。


業種分類

定 義

製造業その他

従業員20人以下

商業・サービス業

従業員5人以下


中小企業白書によりますと、2016年での統計では、日本の企業99.7%が中小企業であり、そのうちの84.9%が小規模企業という統計が出ています。皆さんが仕事をしている会社も、中小企業、小規模企業だよ、という方、きっと多いですよね。


このページでは特に「小規模企業」の中に定義されるくらいの規模の企業(会社や個人事業も含む)を想定してこのブログを書いています。


※上記の2つの図については中小企業庁のHPにある、「平成28年経済センサス-活動調査」のデータを分析し、中小企業・小規模事業者数の集計作業をとりまとめた図を参照しました。参照サイトのページはこちら。


小規模な企業のオフィス


小さな会社の特徴は


「小さな会社=小規模企業」です。まさに上の図のとおりです。


当方のお客様も9割が小規模企業です。小規模企業の中には当然個人事業主も含まれており、企業の中には社長1人で経営している企業もあれば、従業員がいる企業もあり、個人事業でも5人ほどの従業員がいる企業もあります。


企業の環境によって特徴は様々ですが、共通していることもいくつかあります。下記が小さな会社=小規模企業の特徴です。


 ✅人的資源が少ない(小規模だから当然です)

 ✅人的資源が少ないので、1人の人が色んな役割を担っている

 ✅社長自ら現場で仕事をして、経営に集中していない

 ✅社長の権限が大きく、指示伝達が早い

 ✅資金力が乏しい(小規模だから当然です)

 ✅身内の従業員がいる場合は、その身内従業員との感情的軋轢が仕事に影響する


以上が、小規模企業の特徴です。人的資源が乏しいことが多く、社長が経営に集中しないので、家族の生業的な事業からもう一歩成長するステップが、とてもハードルが高い環境の企業が多いのです。


成長へのハードルが高いので、資金力が乏しく、人的資源が少ないままでの経営が長く続き、時に行き詰まったりして、身内の従業員との感情的軋轢が生まれ、それが仕事にも影響する・・・というようなスパイラルを繰り返していきます。


じゃあ、小規模から脱したらいいのかというと、そうでもありません。


市場の環境によったら、小規模のままの経営の方が上手く生き残っていける企業もあります。例えば私の事務所のような田舎での経営の場合や、従業員を雇いたくない経営者の場合などは、拡大成長を目指すのはリスクにもなるからです。



小さな自転車店の経営者


「事業」を定義してみる


まず「事業」という意味を考えてみます。


事業とは、「仕事」であり、生産・営利を目的として経営する仕事


とされています。


それでは「仕事」とは、職業や業務として何かをすること、とされています(国語辞典)。


企業が行う事業では、小規模大規模含めて、事業の内容や区別はある程度明確であるという暗黙の前提がありました。でも、今、そんなに簡単に企業の事業内容を区別し、定義付けできることがあるでしょうか?


ある経営学の本で事業についての定義を「鉄道事業」の例で説明していました。この例が非常に分かりやすかったので、この例を参考にして事業について書いてみます。


鉄道事業をしている企業は、自分たちの事業を「鉄道事業」だという狭い範囲で見ていました。鉄道事業にこだわり続けたため、自動車が普及してきた時、その環境変化に対応できず、鉄道事業を縮小させました。


もし鉄道事業をしている企業が、自らの事業を「鉄道事業」として捉えずに、「輸送事業」、人や物を目的地まで運ぶこと、という風にとらえていたら、その後の自動車の普及に対してどう対応できたか?ということです。


その他の例だと、例えば私のような「行政書士」という仕事ですが、


行政書士の仕事は、行政に提出する手続きの書類を作る…という事業です。お客様が、例えば新規の事業を始める時などに、行政へ許可をとったり、登録をしたりしないと始められない事業があります。その時の作業がいささか複雑だし、法律も絡んできたりするので、そのようなことに慣れてないお客様に代わって書類を作ったり、許可がとれるように段取りをしたりしてあげるのが私たちの仕事です。

こう考えると、単に「書類を作って行政に出す」事業ではなく、「お客様の新規事業のサポートをする」という側面が見えてきますね。



遠くを見つめて考えを巡らせる小さな会社の社長


これからの事業の方向性を考える時


多少拡大して、なりわい的事業から一歩成長させるにしろ、現状の規模を維持してなりわい的にやっていくにしろ、「これからの事業をどのようにやっていくか」ということを全く考えない経営者はいないと思います。


その「事業をどうするか」というのが、企業戦略なわけです。


小規模企業は単一の事業だけをやっていると思われがちなところも多いのですが、見方を変えると色々な事業を組み合わせている…ともとれます。


単一でやっていく、あるいは今やっていることをずっと同じようにやっていくとしたら、成長させるにしろ、現状維持にしろ、より今の市場を深めていく、ということになります。全くと言っていいほど今の状態を維持する、というのは不可能でしょう。世の中の変化を多少は受けることになるので、事業が動いていれば多少の変化はあるはずです。


もし新しい事業を組み合わせて、より広げていくとするならば、どのような方向で広げていくかということです。


 ✅今と同じ市場に対して、新しい商品を投入する

 ✅商品は同じで、新しい市場を開拓する

 ✅市場も商品も新しい分野に打って出る


このどれかの方向性をとることになります。地域密着型の小規模企業だと、市場は同じで新しい商品を投入する、というのが一番小さな動きですみます。商品開発というリスクはをとる必要はありますが、何も画期的で真新しいものを作る必要はなく、例えば


地方で小さな家屋の修繕をしている大工さんなら、お客様は高齢者が多いかもしれません。地方で、なおかつ過疎地のお客様が多いなら、過疎地の高齢者のお困りごとを解決する新しい何か(例えば買い物代行、草刈り代行)を新たに始める…


といったことでも多角化になります。今と同じように、同じように過疎地の、いつも大工仕事で行っている場所での需要なら、移動する場所は変らず、できる仕事は増えるということになります。



一人で仕事をする大工さん


小規模企業(小さな会社)の多角化戦略の大事なポイント


まずは「小規模企業(小さな会社)の特徴」について振り返ってみましょう。


小規模企業には以下のような特徴があります。


 ✅人的資源が少ない(小規模だから当然です)

 ✅人的資源が少ないので、1人の人が色んな役割を担っている

 ✅社長自ら現場で仕事をして、経営に集中していない

 ✅社長の権限が大きく、指示伝達が早い

 ✅資金力が乏しい(小規模だから当然です)

 ✅身内の従業員がいる場合は、その身内従業員との感情的軋轢が仕事に影響する


このようなことから、小規模企業の多角化戦略を考える時のポイントとして3つの考え方をあげてみます。


※乏しいことがリスクにならないような多角化


人的資源や資金力が乏しい、という小規模企業の特徴から考えて、多角化することの条件が「人の雇用」を伴うものであるような多角化は避けた方がいいです。


その雇用したい人が、多角化したい事業での経験や実績がある人で、雇用することで拡大を促進してくれるような人材であれば別ですが、新しく人を雇用したら、その人を教育したりする手間とコストが増えることになります。


まずは今の人員で対応できるような、小さな変化から始める方が無難です。


※社長のリーダーシップを少し弱めてみる


数人でも従業員がいるなら、ある程度従業員に権限移譲した方が社長自身が楽になります。多角化をするなら、今やっている事業に+αの労力が必要になります。人の集中力は自分で「ここまでできそうだ」と考えるより、はるかに集中できないものです。


社長が自信があってできるなら、自分がリーラ―シップをぐいぐいとってやっていけばいいですが、従業員の成長のために、多少の権限移譲をしてみた方がいいです。


※「家族と仕事の問題は別」を絶対的に意識する


多角化や成長を考えなくても、仕事をしてる以上は、これは徹底できる方がいいです。


家族同士のやりとりは、感情的になりがちで、従業員の前でも平気で怒鳴り合いのケンカをしたりすることがあります。


仕事のパートナーが家族であったとしても、そこに感情が入ってしまうと、冷静で合理的な判断ができなくなります。常に意識が必要です。



家族で一緒に仕事をすること

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